零章 side[AI]

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 理性なんてなくなって、ただ欲望を吐き出したい。孕ませたい。噛み付きたい。  数少ないΩの発情を目の前にして理性を保てる奴なんて殆どいない。 「オレはそんな利用のされ方はもう嫌だ。運命だからって気持ちもないのに抱かれたくなんかない」 「そんな事しないって言っただろ!?」 「そんなのこれから先、わからないじゃないか!」  例え今は何とか保てられても、この次もしまた発情期にフェロモンにあてられたらどうなるかわからない。  その度に手を噛んで痛みで誤魔化すのか?  それとももっと強い痛みを自分に与えて?  薬さえちゃんと飲めばフェロモンにあてられることもないけど、今日みたいに突然発情した時はどうする?  オレがコイツの傍に居たら、突発的に発情する事がこの先何回も起こるかもしれない。  オレがほんの一瞬でも「守らなきゃ」と思った相手を、オレの存在のせいで危険に曝してしまう。 「オレは運命なんていらない」  運命で惹かれあっているのに、運命がオレを、コイツを苦しめる。  こんな運命なら出逢わなければ良かったのに、どうして出逢ってしまったんだ。
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