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どうしてオレはαなんだ。
どうしてコイツはΩなんだ。
なんでそんなものが存在するんだ。
忘れられるはずがない。
出逢った瞬間、強烈に引き寄せられた感覚を忘れられるはずがない。
無かったことになんか、出来ない。
「……ちゃんと、顔見せて欲しい」
もう二度と逢えないのなら、この目にしっかりと焼き付けておきたい。
オレの運命のΩの顔を。
怪我をしてない方の手で頬に触れてみた。
抑制剤が効いてる筈なのに花の様な匂いが触れた所から香ってくる。
理性を飛ばすような強烈なものじゃなくて、包み込むような優しい香り。
酔いそうになる。狂おしい花に。
「運命じゃなくても、きっと……」
オレはお前に惹かれていたと思う。
そう言おうとして言葉を飲み込んだ。
そんな言葉は何の救いにもならない。
「キスしていいか」
「……ダメ」
時間を忘れるくらい見つめあっていたのに気が付いて、ソイツは頬を赤く染めた。
そんな反応されて、ダメなはずないだろう。ダメなら早く、目を逸らせばいいのに。
いつまで経っても逸らす事のない真っ直ぐな目にオレが映り込んでいる。
顔を近付けて様子を見るけど、目を逸らさないまま動きもしない。
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