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さっきまで脅えていたのに、そんな行動を取られるとは思いもせず呆気に取られてされるがままになってしまった。
落ち着いてよく見ると男の癖に可愛い顔をしている。Ωやαなんて関係なく、好かれそうな顔立ちだ。
容姿も何も確認しないで連れてきてしまった。あの場所で発情したコイツが他の誰かに襲われないように必死だった。
「……ありがとうございました……あの……発情期はこの間終わったばかりで油断してました」
「別に……あんたのせいじゃないだろ」
悪いのは誰か、なんて答えはない。
子供が親を選べないように、性別だって選べないのだから。
「それより、あんたさ……」
「はい」
「あんたは分かってんの?」
発情期が終わったばかりのΩが発情するなんて、原因は一つしかない。
その理由をコイツはちゃんと理解してるんだろうか。
「あ……えと……」
ハンカチを結んだ後、ソイツは困った顔をして俯いた。
この顔はきっと理解している。俺達がどういう関係なのかを。
「今日の事は忘れませんか?」
ソイツの言葉に頭が真っ白になった。
何を言ってるんだ、コイツは。
忘れるってなんだ? 無かったことにしろって事か?
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