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「出逢わなかった事にして下さい」
「何で……」
何で平気な顔でそんな事言えるんだよ。
そりゃ、オレだって運命の番なんか信じてなかった。でも出逢ったんだ。
頭で考えるより本能が、コイツなんだと訴えている。
薬を飲んでフェロモンを抑えた今でさえ、その項に噛み付いて自分だけのものにしたいと感じているのに。
「オレは誰とも番うつもりは無いんです」
「……運命、でも?」
「運命だったら尚更、番うつもりは無いです」
ショックだった。
運命の番は相手が何であれ絶対に番うものだと思っていた。
ただの都市伝説だと思っていたけど、目の前に本当に現れたんだ。当然の様に番うものだと思い込んでいた。
「自分の意思とは関係なく振り回されるのはもう嫌なんです」
ソイツは散っていく花の様に笑った。
自分の産まれ持った性にこれまで散々振り回されてきたのは容易に想像出来た。
Ωというだけで差別や偏見に合う。
αとは全く逆の存在。今まで何の苦労もせずに暮らしてきたオレには理解出来るはずがなかった。
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