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だから余計に悔しかった。
まだ名前すら名乗っていない。何処の誰だかも知らない。
全くのゼロからの出逢い、いや、マイナスからの出逢いなのにコイツはオレの事を何も知らずに忘れてほしいと言う。
「貴方は見た感じ、αの家系でしょ?」
「そう……だけど」
「だと思った。凄くプライドが高そうだ」
少しだけイラッとした。まだ何も知らないくせにαの家系というだけでプライドの高さまで計られて。
でもそうやってイラついたりするから、プライドが高いって言われるんだろう。
オレはとことんα性に浸って生きてきたんだと痛感させられる。
「きっと番うと言えば貴方の家族は反対する。運命だからなんて通じない」
確かに両親だけではなく、親族もΩの血を入れる事を許したりしない。
αはαと結ばれ、αを残すのが当然だという考えの家だ。
オレもそう思っていたし、疑問にも思わなかった。
「本気で番うつもりなら、貴方の家族を説得しなきゃいけない。オレにそんな価値はないし、説得出来るなんて思えない」
なんの反論も出来なかった。
さっき会ったばかりのコイツをいきなり連れて行って番にするなんて、そんな話を「わかった」と簡単に頷くような親ではない。
「だったら……最初から出逢わなかった事にした方がいい。そして二度と会わなければいい」
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