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しかし、彼が自信を持っていた理由が分かった。
それを知ったのは、雑誌だ。
僕が伊織さんの載っている雑誌を全て購入しているのを知っているからこそだ。
そこには……『天才ピアニスト宝生伊織×ニューヒロイン木嶋邑』という特集。
どうやら伊織さんはその新人の若い女性と連弾でCDを出すようだ。
しかもそこには笑顔で握手を交わす2人の姿が。
…これか。
僕が、この企画に対して嫉妬すると思ったのだろう。
「その手には、乗らないからね…」
彼の手の上で転がされるなんて嫌だし、特になんとも思わない。
仕事なんだから。
そう自分に言い聞かせ、僕は何も気にしていませんよ、という風に生活した。
しかし、伊織さんもちっちゃい攻撃をしてくる。
「じゃあ、今日は邑ちゃんと打ち合わせしてくるから」
「今夜、邑ちゃんと、スタッフさんと呑んでくるから遅くなる。
先に寝てていいよ」
とか。
それが、地味に続いて、最初は「いってらっしゃい」と笑顔で送り出していたが、日が経つに連れて笑顔が凍りついてきた。
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