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「紬?」
「……だ」
「え?」
「いやだ。匂い」
「匂い?」
僕の台詞を聞いて、伊織さんが自分の服を嗅ぐと、眉間にシワが寄った。
「…ごめん、香水の匂い、付いたみたいだ」
「…また、“邑ちゃん”?」
皮肉のようにそういうと、伊織さんがハッとした顔をした。
その顔を見て、少し言いすぎた、と後悔が襲ってきたが、伊織さんはいきなり立ち上がると部屋を出て行ってしまった。
…あーあ、愛想つかされた。
せっかく話をしようと思っていたのに、全然うまくいかない。
僕は小さくため息をつき、いつものベッドへ向かい横になった。
…だが、なかなか寝付けない。
何度も寝返りを打っていると、ドアが開く音がして足音が近づいてくる。
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