SS2『重なる音、寄り添う心』

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「紬?」 「……だ」 「え?」 「いやだ。匂い」 「匂い?」 僕の台詞を聞いて、伊織さんが自分の服を嗅ぐと、眉間にシワが寄った。 「…ごめん、香水の匂い、付いたみたいだ」 「…また、“邑ちゃん”?」 皮肉のようにそういうと、伊織さんがハッとした顔をした。 その顔を見て、少し言いすぎた、と後悔が襲ってきたが、伊織さんはいきなり立ち上がると部屋を出て行ってしまった。 …あーあ、愛想つかされた。 せっかく話をしようと思っていたのに、全然うまくいかない。 僕は小さくため息をつき、いつものベッドへ向かい横になった。 …だが、なかなか寝付けない。 何度も寝返りを打っていると、ドアが開く音がして足音が近づいてくる。
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