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ダッ、ダッ、ダッ、ダッ……バタンッ!!
「お姉ちゃーーんっっ!!助けてっ!!私の代わりに明日『お見合い』してきてぇぇぇっ!!!」
勢いよく開け放たれた、私の部屋のドア。
季節は桜が咲き乱れる四月のこと。
日払いバイトでその日、その日の日々を送っていた私こと、姉の琉奈28歳独身は、ダラダラと部屋のベッドで横になり、大好きなファッションモデルの『新庄 レイト』の特集を読みながら、うっとりとしていた。
そんな時、妹の美緒25歳が、泣きながら私に向かって走り出し、ベッドに居る私の上に全身を覆い被さるようにダイブしてきた。
「ぐえぇっっ!!」
潰された蛙の様なうめき声をあげた私は、暫く動く事が出来なかった。
「ひっぐ、ふっぐ……ふぇ~ん……お見合いやだぁぁ!私は、彼氏のマーくんと幸せになるんだもん~……」
シクシクと私の背中に顔を押し付けて泣く美緒に、私は訳がわからず、顔だけあげて美緒に聞いた。
「はっ、はぁ~……死ぬかと思ったっ!ちょっと、美緒!どういうこと?『お見合いしてきて』って何っっ!?」
美緒は乗っかっていた私の背中から退けると、ベッドの端に座って、両手で涙を拭いながら話し出した。
「あのね、美緒の働いてる病院に『城崎 大和』って名前の外科医の先生が居るんだけど、私、その先生に言い寄られててね…」
「え?なに?自分はモテますよアピール話?超要らない、そんな話し」
私は起き上がって、無表情で美緒に言った。
「聞いてよ!美緒、先生に何度も『付き合えない、結婚出来ない』って、言ってるのに聞いてくれないのーっ!!でね、とうとうその先生がお母さん達に連絡してきて、『明日、美緒さんとお見合いさせてくださいっ』て連絡してきたのー!」
私は美緒の話を聞いて、またうつ伏せに寝転がり、途中まで見ていたファッション雑誌を開いて読みながら美緒に言い放った。
「…フーン、へェー…良かったねーおめでとうー。美緒は私と違って可愛いから、昔からモテてたもんね~。よかったじゃん?将来安泰だよ、おめー」
「ヤダっ!私は心に決めたマーくんがいる!だから、城崎先生とお見合いしない!!お姉ちゃん、どうせ彼氏も居ないし、フリーターでしょ!?殆んど暇人してんだからさ、私の代わりに行ってきてよっ!」
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