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荷物をフロントに預けて、『華の間』まで案内をしてもらった。
エレベーターで2階に上がり、暫く歩いて行くと、一番奥の突き当たりの白い扉の前で立ち止まった。
「神谷様、こちらが『華の間』になります。それでは失礼いたします」
そう言って、案内してくれた女性は去っていった。
一人、扉の前に立ち、緊張して震える手を抑えて、呼吸を整えて、意を決して扉をノックした。
コン、コン。
『はい、どうぞ』
低めの男性の声がして、私は取っ手に手を掛けて、扉を押し開けた。
「し、失礼しますっ!!」
私が扉を押し開けると、すぐ目の前に、長身で紺色のスーツ姿、整った顔立ちの素敵な黒髪ショートの男性が、驚いた表情をして両手を半開きにして立っていた。
「………」
私は息をするのを忘れてしまうぐらいに驚いた表情をして、扉を開いたまま身体が固まった。
すると、男性はみるみる目付きを鋭くしはじめて、両手を腰にやり、私を睨みながら言ってきた。
「…オイ、部屋間違えてないか?…あんた誰?」
「……はっ!!」
男性の声で止まっていた思考回路が動き始め、私も目の前の男性を睨見上げながら部屋の中に入り、静かに扉を閉めた。
暫く沈黙のあと、私は軽く息を吸って男性に言った。
「あなた、城崎 大和さんですか!?」
私が聞くと、男性は腕を組始めて私を睨み付けた。
「だったら何なんだ?てか、あんた誰だよ」
私は姿勢を正して起立をし、妹に言われた事を伝えた。
「私、妹の美緒の代わりに来ました!名前は神谷 琉奈と言いますっ!貴方とお見合いする気も、結婚する気も妹にはありません!なので、今後こんなことしないで欲しいと、妹は言ってました!!」
「…………」
城崎さんは黙ったままだった。
「妹から、“貴方に言い寄られていて困ってる”と聞きました!妹には心に決めた人が居ます!貴方も大人なら、新しい人見つけて幸せになってください!以上っ!!」
私はペコリと挨拶をして起き上がり、部屋を出ていこうと、向きを変えた。
城崎さんに背中を向けて、扉の取っ手に手を置いた瞬間、“ダンッ!!”と大きな音をたてて、扉を開かないように城崎さんが手で扉を抑えた。
「ちょっ!何なんですか!!」
私は若干キレ気味に顔だけ後ろを振り返ると、城崎さんの顔がすぐ側にあり、鋭い目つきをしながら私を睨み付け、話し出した。
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