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君の顔
「なあ、新見」
手招きすれば、足音も静かに遼がタブレットパソコン片手にやってくる。
ほづみは目配せして、空いている隣の席に遼を座らせた。
「何か、お入り用で?」
「リングに乗せる宝石なんだが、どれが良い?」
遼と組んだ当初は、宝石の選定もほづみが意見を通していたが、最近は遼の見解をまずはじめに聞くようになった。
遼はあからさまに嬉しそうに目を輝かせ、タブレットパソコンを覗き込んで資料になる画像を用意していく。
(シャンプー変えたのか? まあまあ、良い匂いだ)
徹夜続きのほづみは、眠気まなこをこすりつつ、遼の横顔を眺めた。
ジュエリー作るのではなく、つける方の顔。
何を与えても、そつなくつけこなしそうな美形は、好ましいが腹立たしくもある。
「ほづみさん、これなんかどう……」
「……? どうした」
ほづみはあくびを噛み殺し、肩から落ちた遼の長い後れ毛を、耳へ掛け直す。
艶のある髪は綺麗だが、顔を隠すのは良くない。
「続けろよ」
「は……はい」
遼は瞼を瞬かせ、こほん、と咳払いをしていくつかの案をほづみに提示して行く。
宝石の画像が写り込む遼の目が、不思議な色合いを見せるのに、ほづみ仕事も忘れ、ぼんやり見入っていた。
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