僕が、ほづみさんにいたずらしたいんです。

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僕が、ほづみさんにいたずらしたいんです。

 ふわり、ふわりとした妙な浮遊感。  夢の中に落ちる間際の心地よさに微睡んでいたほづみを邪魔したのは、自称夢魔の新見遼だ。 「明日も仕事なんだから、さっさと俺の夢から出て行け」 「余裕ですね、ほづみさん。どうして、約束を破って平日に夢の中にお邪魔したのか、少しは疑問に思ってくださいよ」  目蓋を持ち上げてみれば、おきまりの白い空間が広がっていた。  きちんとベッドに入ったはずなのに、ほづみはどうしてか真っ赤なソファーの上に座っていて、隣には長い髪を後ろでひとつに結んだ美丈夫が、にやにやと笑っていた。  会社で別れたときのまま、きちっとしたスーツ姿の遼に合わせたように、ほづみもスーツを着ていた。  目を閉じる前までは、だぼだぼのスウェットを確かに着ていたはずだ。  夢の中では、夢魔である遼に主導権があるのはたしかで。自分の夢なのに、好き勝手弄られるのは、わかっていても面白くない。  ほづみは不機嫌を顔全面に押し出して、遼を睨んだ。 「寝不足で、俺を殺したいのか?」 「そんな、大げさな。まあ、たしかに眠りは多少浅くなりますけど、完全に二人っきりになれるんですから」     
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