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覆い被さってくる遼の胸を押し返し、ほづみは再び目を閉じようとして……股をなぞる硬い感触に短い悲鳴を上げた。
「ほづみさん、今日が何の日か知っています?」
いつの間にかソファは消え、ほづみは白い床の上に仰向けに寝そべっていた。
「今日? なんだっけか?」
遼は大きく溜息をついたあと、ほづみから離れ、立ち上がった。
「お菓子をくれないほづみさんには、いたずらをするしかないですね」
いつもはニコニコと微笑んでいる遼の顔に、不穏な影が掛かっていた。
「……お前は、いったいなにがしたいんだ」
おそるおそる体を起こし、ほづみは両手を組んで、仁王立ちになる遼を見上げた。
「へっ? は、羽根?」
怒っているんだぞ、と言いたげな遼のしかめっ面。が、見るべき所は顔ではなく……背だった。
スーツ姿の遼の背中に蝙蝠を思わせる大きな羽根が生え、鋭利な切っ先をもつ鞭のような尻尾が生えていた。
「トリックオアトリート」
ハロウィンの常套句を口にした遼は、呆然としているほづみの注意を引くように、尻尾でぺしん! と床を叩いた。
「なっ、なんだよその格好?」
「悪魔の……ちょっと、リアルなコスプレみたいなものです」
コスプレにしては、羽根も尻尾も妙に生物感があって生々しい。
夢だからなんでも有りなのかもしれないが、限度があって良いはずだ。
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