8年前

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近づいていくうちに、全く動く気配はない。 やはり、マネキンなのか、と、思った瞬間、 うつ伏せからゆっくりと仰向けに寝返りをうった。 蒼は声も出ず、その場で座り込んだが、今度は声を出さずにはいられなかった。 「碧!?」 寝返りをうって現れたその顔は、紛れもない弟の顔碧の顔。 月光の中、喘ぐような呼吸、汗で光る身体は、うっすらと透けて、彼岸花が碧の身体を通して見えた。 「碧!?碧!」 蒼はジャケットを脱ぎ、碧にかぶせた。 「警察?救急車?」 蒼の頭は混乱していたが、ジャケットのポケットからスマートフォンを出すと、震えが止まらない指で画面を操作していた時ーーー ふと、腕を掴まれた。 「にぃ……さん」 弱々しく掴んでいたが、どんどん力が入っていく。 「み……どり?」 「大丈夫だから……」 蒼はスマートフォンを落とした。 いつもの碧からは信じられない握力だった。
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