13万と4000億時間のハネムーン

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「諦めてはいなかったのですか? 地球文明の移植を」 「いや、どうだろうね。まぁ、僕らはできるだけのことをしたんだ。他の星に行った奴らがきっとうまくやってくれているさ」 「あなたが男性で良かったということでしょうか。精子サンプルが事故で全て失われてしまっても種の保存ができたのですから」 「それを言うなら、失われたのが精子サンプルで良かったという話だね。それに、おかげで、自分の子孫を随分とたくさん残すことになってしまった。文明移植のプロジェクトに参加すると決めてから、いや、その前からもずっと、自分の子孫を残す事への執着なんてなかったはずだけれど。不思議なものだね。今となっては、この先あの星で産まれ地に満ちていく人々が、全て自分の血を引くという事実が少し誇らしくさえ思うんだ」 「困りました。この会話パターンを分析すると。アダム。人工子宮の提供をしただけの私は少し嫉妬を感じなければならないようです」 アダムは驚いたように目を見開き、思わずといったように身を起こし、今度ははっきりと大きな声で笑うのだった。     
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