925人が本棚に入れています
本棚に追加
ヴィヴィは、その先を言うことができなかった。
ラルスの大きな腕の中に、閉じ込められてしまったから。
「そんな訳ないだろう。
くそっ、俺がもっと早く告げていれば」
「ラ、ラルス様くるひ…一体何を、ひゃっ」
彼はさらにヴィヴィをきつく抱き締めた。
腕が、声が震えている。
「ラルス様?」
ラルスは、大人しくなったヴィヴィアンをそっと離すと、照れくさそうにはにかんだ。
「俺がもたついてたばっかりに…
とうとう君を泣かせてしまった。
今さらなんと言えばいいか、分からなくて。
ヴィヴィアン。
一緒に、ローゼンに帰ろう」
「え?」
「アルベリヒ様の墓標にも、もうだいぶ帰っていない。お詫びをしなくてはな」
「ラルス様?何を言ってるんです、そんなの無理に決まってるじゃないですか。ローゼンには叔父様がいるし、ラルス様には騎士のお仕事だって」
ヴィヴィには、全くわけがわからない。
一体、どうしてしまったのかと、目を白黒させるばかりだ。
「ああ、いけない。順序が逆だったな。
つい先走ってしまって」
今のラルスに、普段の冷静さはひとつもない。
慌ててベッドから下りると、ヴィヴィの前に膝を折った。
最初のコメントを投稿しよう!