健太(1)

2/5
前へ
/35ページ
次へ
小鳥の(さえず)りが、朝の訪れを伝える。窓から差し込んでくる温かい太陽の光が、僕を包み込む。 こんなに心地のよい朝はない。 今日は、土曜日。 待ちに待った初デートの日である。 「……健太サン……健太サン」 鏡の前で準備をしていると、タロウが話しかけてきた。 「どうした、タロウ?」 タロウは、ピピピッと目を光らす。 「健太サン、オハヨウゴザイマス」 「おはよう!」 「今日ハ、10月7日土曜日デス」 「そうだね! 清々(すがすが)しい朝だ!」 「亜美チャント、デートノ日デス」 「うんうん! これで髪をセットしたら出掛けるつもり! タロウは留守番よろしくな!」 「健太サン」 「ん?」 「ソレハ、夢デス」 …… …… …… がばっ。 やらかした。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加