1 始まりは災難より

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(あぁ、やっと……楽になれる……) そう思った瞬間、誰かに腕を捕まれた。 ハッとしてアキトが見上げた先には、逆光でも安易に識別できるほど親しい友人の……見たことのない顔。 「なにやってんの!! アキちゃん!!」 身を乗り出して、アキトの腕をつかんでいるサツキは、必死に声を掛けた。 今にも泣きそうで、それでも怒っているようで、何とも言えない顔でアキトを見ている。 「……あーぁ、なんでサツキちゃん見つけちゃうかな」 宙にぶら下がったまま、眉を下げて笑うとため息をついて続けた。 「サツキちゃんも落ちちゃう。 だから、離して?」 「何いってんの?! バカなことしてんじゃないわよ!!」 「サツキちゃんには……分からないよ……」 「……っ、わかってるわよ…… アキちゃんに魔力がなくて、苦労してるの……ずっと見てたから分かってるわよ!!」 「なら、もう楽にさせてよ…… やるだけやった、誰よりも努力し続けた!! でもっ……魔力のない私じゃ、みんなみたいなパフォーマンスはできない!!」 見上げた瞳は、涙で溢れ返っていた。 尚も、アキトはサツキに思いの丈をぶつける。 「どんなに頑張っても、みんなに先を越されてく……私には、なんの力もない!!だから……」
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