1 サンタクロースが降ってくる町

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1 サンタクロースが降ってくる町

 ふと、峯田が顔を上げた。最初に気づいたのが彼だった。すぐに、大きな音がして浮葉と蚊鳴屋も顔を上げた。山の上の方から、何かがこちらに向かってくる。 「浮葉、下がって!」  イノシシか何かか、と思っていたら峯田と蚊鳴屋が前に出て、浮葉を庇おうとした。  そこに、何かが転がり落ちてきた。 「わああ! ひ、人だ!?」  峯田が、受け止めるべきなのか、避けるべきなのか、迷って結局、全員が落ちてきた人の下敷きになった。 「痛た……だ、大丈夫ですか?」  蚊鳴屋が首を上げて、落ちてきた人を見た。大人のおとこだった。 「あっ、浮葉の初任給が!」  同時に、峯田が飛び起きて、今の衝撃で壊れてしまったちいさな鳥居を見る。小人しかくぐれないサイズの鳥居だが、根から折れてしまっていた。新年早々縁起が悪い。     
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