1 サンタクロースが降ってくる町

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 理由はわからないが、自分はソリから落ちたらしい。そしてそのソリは主を無視して遠ざかって行く。サンタはああ……と情けない声をもらして、しかしどうすることもできない。  しばしの沈黙ののち、浮葉が腹が減ったな、と言ったので四人で近くの定食屋に入った。  きつねうどんを四つ注文する。サンタは慌てて財布を確かめた。なんとかジャケットに入っていたようだった。 「ところで、サンタさんは……あ、サンタさんって呼んでいい? 本名あるの?」 「三田と言います。三田樹音」 「日本人なの?」 「ええ、大学を卒業してからサンタに就職して、しばらくずっとフィンランドに」 「もしかして、ミタって、みっつの田んぼと書く?」 「ええ。なので、サンタでも、好きに呼んでください」  サンタははにかんで笑った。 「サンタさん、これからどうするの? あのトナカイたち、呼び戻せるの?」  峯田が訊くと、サンタは急に顔を曇らせた。 「そう、なんですよね……」  サンタが言うには、あのトナカイたちを呼び戻すことは不可能。トナカイたちは決められた行先に行くことしかできない電動なのだという。 「え、あれ生きてるんじゃなくて機械ってこと?」 「ええ、実は……。動物よりはむしろ飛行機に近いものです」 「でもなんで落ちちゃったの? そもそも、どこに行こうとしてたの?」 「それも、思い出せなくて……」     
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