1 サンタクロースが降ってくる町

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 サンタは申し訳なさそうにうつむく。  「でも自分でフィンランドに帰るのってすごく大変でお金もかかるよ?」 「あ、それは……」  サンタは一瞬ためらって、 「あの、もうご存知だと思うんですが、今、その、サンタは大変なことになっていて……。俺たちのような下っ端はほぼほったらかし状態で、暇を言い渡されたんです。むしろ、いろんな調査が入るからって寄宿舎に帰ることを禁止されて、仕方がないので故郷に帰ってきたんです。でも、日本に来たって、家があるわけではないんですが……」 「実家は?」 「帰ってくるな、って言われてます」 「なんで?」 「ご近所の恥だから、って……」 「そんな」  峯田が他人事にも関わらず納得がいかないといったように口を尖らせた。 「でも、サンタさんは浮葉になにか貸しがあるんだよね? とりあえずそれを返したら? 浮葉の家まで乗せていくのはかまわないよね」  運転手である蚊鳴屋を見ると、彼はこくりと頷いた。 「心当たりはないが」  きつねうどんを食べ終わった浮葉が冷たく言う。 「ていうかそもそも、浮葉とサンタさんはどこで知り合ったの? サンタさん、ずっとフィンランドに住んでるんでしょ?」  浮葉はまたぷいっとそっぽを向いた。     
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