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「どこかで両替できたら払います」
「うどんの一杯くらい、気にしなくていい」
浮葉は優しく笑って言った。
「そうそう、サンタさん、べつに気にしなくていいよ。お年玉と思っておごってもらおうよ」
何故か峯田がサンタの肩を叩いて言う。そして蚊鳴屋の車まで促した。
「すみません、よろしくお願いします」
「いえ」
サンタが申し訳なさそうに言うが、蚊鳴屋は優しく微笑んだ。
「気にしないで。ぼくたち、困ってる幻想生物を助けるのが大好きだからさ」
*
京都の、浮葉の住むマンションの前で浮葉、サンタ、峯田が降りた。蚊鳴屋はこのまま自宅に帰るらしい。
「って、なんでお前まで降りるんだ」
浮葉が訊くと、
「帯刀んち、今お兄さん夫婦と両親が帰ってきてるんだ。だからぼくは年末からずっと麦の家にいるんだけど、麦もいなくて、ひとりだと暇だから」
麦、とは浜麦という名前のきつねの妖怪のことである。普段は人間に化けて大学生をしている精悍な若者で、いろいろあって先日から峯田とねんごろな関係になった。さぞ、ラブラブな年末年始を過ごしているのかと思ったが。
「なんだ、麦くんは実家か?」
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