1 サンタクロースが降ってくる町

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 いくら付き合いたてと言っても、浜麦の家も古い家だ。正月くらい顔を見せろと両親に言われたら、彼は逆らわないだろう。 「んーん、麦は大学のみんなとハワイ旅行。年末年始にハワイなんて、最近の大学生はリッチだよね。麦はファイトマネーで儲かってるからいいとしても、その二週間前に比べて年末年始ってだけで十万円も値段が上がってるんだよ、信じられないけど、男子も女子も混合で七人くらいで行ってるんだって」 「よく許したな」 「だって、もう何か月も前から予約してたって言うし、それに、麦、来年のホノルルマラソンに挑戦するつもりらしくて、その下見もしたいんだって。それにぼくは、別に恋人が他人と旅行に行くことにとやかくなんて言わないよ。麦だって大学生なんだから、いろいろ付き合いもあるし」 「毛が暑そうだな」 「浮葉がどんな姿を想像しているのかわからないけど、たぶんきつねの姿にはならないんじゃないかな……」  そう言いながら、峯田は先頭に立ってサンタを案内した。  浮葉がカードキーで鍵を解錠し部屋に入る。サンタと峯田がそれに続いた。  部屋はエアコンが入れっぱなしになっていたのか、寒くない。峯田は自分のコートを脱いだ後、サンタのコートを預かってハンガーにかけると、 「サンタさん、コーヒーと紅茶どっちがいい?」  と訊いた。 「紅茶」     
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