1 サンタクロースが降ってくる町

15/27
前へ
/97ページ
次へ
 答えたのは浮葉だった。峯田が手際よくポットを用意し、ウォーターサーバーからお湯を注ぐ。いくつか予備のボトルが脇に置いてあった。  浮葉はサンタを呼ぶと、 「一応、本棚を見てみるか? あのときと違うものがあったら思い出すかも」 「覚えてないと思うけど……」  小声で話ながら、二人で別室に入った。 「っていうか、むしろパワーアップしてないか……」  二人が入ったのは、四辺がすべて、天井まで本棚になっている部屋だった。 「あのときは、いくつか空の棚があった気がしたけど……」 「そりゃあ、五年もあれば増えるさ。漫画系はだいたい処分して電子に切り替えたけど」 「サンタさん、過去にもここに来たことがあるの?」 「「わっ」」  完全に気配を感じなかった。後ろからひょいっと顔をのぞかせた峯田を見て、二人は驚く。 「聞いてたのか。悪趣味だな」 「あ、隠し事だった?」 「そういうわけじゃない」 「ふうん、でもすごく珍しいことに思えるな、浮葉が他人を……初対面の人を家に上げるなんてさ」  峯田はあくまでふと思ったことのように言う。 「それくらい親しいなら、何か貸し借りもするかもね」  そう言って、そろそろ紅茶が入るよ、と言ってキッチンに戻った。 「……まあ、あとでゆっくり見ればいい」 「……はい」  二人もリビングに戻った。     
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加