1 サンタクロースが降ってくる町

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 いくら困った人を助けるためとはいえ、恋人の家を間借りしている立場で、他の男を連れ込むのも申し訳がない。年下の礼儀正しい恋人は、メールででも事情を話せば笑って許してくれそうな気もするが、しかし機嫌を損ねたら、《金剛》を食らう可能性がある。彼は本職なので上手い。つまり痛い。 「住むところはうちで手配できる」  浮葉が澄ました顔で言った。 「知ってると思うが、俺は妖怪が人間社会で普通に暮らす手配や調整をする仕事をしている。希望があれば住むところや仕事の斡旋もできるが、いつ呼び戻されるかわからないから一時住まいのほうがいいだろう」 「お金は……」 「うちの会社で貸せる。どんな妖怪も、最初はお金なんて持ってないから、気にしなくていい」 「サンタさんも、妖怪と一緒のくくりでいいの?」  峯田が素朴な疑問を伝えると、浮葉は、まあなんとかなるだろう、と軽く答えた。 「そうと決まれば、出かけるぞ」  浮葉が残っていた紅茶を飲み干す。 「どこに?」 「福袋を買いに行く」 「福袋?」 「サンタの着替えが必要だろ。今日のぶんだって持ってないんだし」 「今日は……」 「今日はうちに泊まればいい」 「あ、よかったね。サンタさん。でもなんで福袋? 浮葉、買ったことあるの?」 「ない。けど、一度買ってみたかった」 「あんなの、売れ残りの寄せ集めだよー!」  峯田が常識人のようなことを言う。 「どちらにせよ、何ひとつ無いんだから買いに行くぞ」  そう言われては、サンタに逆らえるはずはなく、三人はふたたび部屋を出た。     
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