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浮葉がサンタを見て、彼がゆっくりと手を開く。小石だった。河原でもないのに、百貨店の紳士服売り場でいきなり小石が飛んでくることがあるだろうか。峯田が警戒してあたりを見回す。
「……ありがとう」
「いえ」
サンタは自分で自分の行動に驚いているようでもあった。
「サンタさん、動き素早かったね。見えてたの?」
「いえ……ほとんど、体が勝手に……。浮葉が危ないと思ったから」
「それにしたって、何も基礎がない中で動けることじゃないよ。やっぱりサンタクロースだからかな」
サンタがキャッチした小石をもう一度見た。小さいが、今のようなスピードで飛んでこられたら痛いし、皮膚に傷がついただろう。
「三名様でお待ちの、ペペさまー」
三人で顔を見合わせて沈黙してしまったが、呼ばれたのでとりあえず店に入った。
*
「気が変わった」
あんみつを食べながら、浮葉が言った。
「サンタには別で家を借りるのではなく、うちに住ませる。俺の用心棒として」
「用心棒……?」
「最近、さっきみたいなことが何度かあって」
「ええっ!」
声を上げたのは峯田だ。
「ちょ、ちょっとそれ大丈夫なの?」
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