1 サンタクロースが降ってくる町

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 浮葉もそう言いながら服を脱ぎ始める。ふと、浮葉の背中が目に入った。無駄な脂肪がなく、筋肉も控えめで痩せている。少し伸ばした髪の間から、白い首筋が見えてサンタは目が離せなくなった。どんな時でも晒されることのない尊い肌がこんなに無防備に目の前にある。目が離せないが、見てはいけないものをいきなり出された気分だ。  それにしても、それ以上にサンタの思考を占領しているものがある。 「……どうかしたか?」  視線に気づいた浮葉が動きを止めてサンタを見た。お互い、半裸で顔を見合わせる。 「い、いや……。あの、……何か思い出せそうで……」  サンタは視線をあちこちにやり頭をかいた。 「そうじゃないな……思い出せそうっていうか、いま、この状況になんていうか既視感があって……」  サンタが眉間にしわをよせて考えているのを見て、浮葉はなるほど、と言った。そしてサンタの目の前に立つ。 「既視感もなにも」  浮葉はサンタの正面に立った。 「忘れたわけではないだろ?」  瞳を覗き込む。晴れたあたたかい日の草原のような、ふんわりとさわやかな植物の香りが鼻に届いた。浮葉がつけているフレグランスだ。冬のような、静かなおとこだと思っていたので、こんなふうに少年のような香りがするのが意外だった。五年前もそうだっただろうか。いや、そのときは、もっとずっと自分よりも年上だと思っていた。冷たくて、人を寄せ付けない雰囲気があった。今自分を覗き込む瞳は、明らかな含みを持っている。こんなふうに、駆け引きをするようなひとだった、だろうか。     
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