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「……いいから服を着ろ」
浮葉はそう言ってベルトを外してスラックスを脱ぎ始めた。サンタはぎょっとしたが、そういえば着替えの途中だった。渡された服をとりあえず着る。
サイズは問題ない。
脱ごうとしたらまた浮葉が近づいてきた。
「ちゃんと着れてよかった。でも、こっちの方が合いそうだな。それは脱いで」
浮葉は『こっち』と言って自分が試着している服をつまんだ。言われるままサンタが服を脱ぐと、浮葉も服を脱いでいて、それを渡された。
「こっちを着てみせて」
少し着ただけなので、そんなに体温が移ったわけでもない、ただ、この人が脱いだばかりのシャツを渡されたということに……サンタは赤面することを我慢できなかった。
みるみる赤くなるサンタを見て、浮葉はきょとんとして、すぐに苦々しい顔になった。
「何を意識してるんだ。言っておくが俺たちの間にロマンスなんてなかったからな。あれは、ただの……」
浮葉は言いかけて、自分も赤くなって言葉を紡げなくなり、黙ってシャツをサンタに押し付けた。サンタは受け取って、素早く着た。
「……やっぱり、そっちの方があなたに似合ってる。明日はそっちを着るといい」
サンタは声は出さず頷いた。
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