1 サンタクロースが降ってくる町

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 風呂から出ると、浮葉がクローゼットからごっそりと寝具一式を出してきていた。 「同じ部屋だけど、問題ないな? というか、寝られる部屋がここしか空いてないから……」  浮葉はサンタを見て目を点にした。 「寒くないのか。っと思ったけど、そうか、下着は買ったけど、寝る服を買ってなかったな。すまなかった。……まあ、サイズは合うだろうから、これを着て」  そう言って、クローゼットから長Tシャツとルームウェアズボンを出してきた。 「あ、でも、俺寝るときは何も着ない派だから」 「ここではちゃんと着なさい。京都は寒いんだから」 「フィンランドの方が外は寒いよ。けど、そうだな。あっちは暖房効率がいいから、部屋の中で裸でいても気にしないんだけど」 「ここでは気にする」 「そもそも、本当にいいのかな」 「何が?」 「ここに、その、少しかもしれないけど、住ませてもらうことが……」 「恋人がいるのか?」 「俺はいない。俺のことはいいんだ……あなたは?」 「……いないよ」  浮葉の言葉に、しばらく反応がなかった。不思議に思ってサンタを見ると、両手で顔を覆って立ち尽くしている。 「何だ?」 「いや、なんでもない」  そう言う割に、しばらく動かない。浮葉は少し心配になった。     
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