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「後悔してるのか? 別に、嫌なら、明日にでも一人部屋の手配を取る。俺だってそこまで自分を心配してるわけじゃないし……。今日は、仕方ないけど」
「そうじゃない」
サンタは片方だけ手を外した。赤面している。
「……期待をしている」
浮葉はぽかんと口を開けた。その後で、つられて赤面した。
「ばか! はじめに言っておくが、その期待は、期待するなら勝手にすればいいが、何の有利にも働かないからな。過去のことは忘れろ。あのときは、ただの、その、遊び、だったから、誰だってよかったことなんだ」
「わかってる! わかってる。でも、その、ごめん」
サンタは両手で浮葉の肩を掴んだ。
「でも、会えてうれしい。会いたかった」
そしてそのまま、浮葉を胸に抱いた。
「あの、これは、あいさつみたいなもので。海外式の」
顔を見ていないのに、浮葉の不機嫌が伝わってきて、サンタは自ら言い訳をはじめた。
おそるおそる、腕を緩める。浮葉は憮然とした表情でサンタを睨んでいた。
ぷいっとそっぽを向いてサンタの腕から抜け出すと、クローゼットから、何かとても大きなものを取り出してきた。と思ったらそれは屏風だった。
四枚つながった屏風を、浮葉のベッドと床に敷いたサンタの布団の間に置く。屏風には虎の絵が描かれていて、サンタを睨んでいる。
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