1 サンタクロースが降ってくる町

27/27
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
「いいか。もう一度言うが、過去のことは忘れて、今日はじめて出会ったつもりでいろ。あんたに懐いた過去の俺はもういない。あのときの悩みは解決したからな。もう一度俺を口説きたいなら好感度ゼロからだと思え」  こんな風に物理的に距離を取られるとさすがに少し悲しい。しかし、確かに今のは馴れ馴れしかったかもしれない。サンタはこくこくと頷いた。 「口説くことは禁止しないのか?」 「それは俺が口を出せることじゃないからな。って、そのつもりがあるのか?」 「……ある、とおもう。その、かんじんなことは忘れたけど、そもそもここに来たのは、あんたに会うつもりだった。念願の長期休暇だからな。まあ不本意だけど」  そんな風に言われるとは思っていなかったのか、浮葉は困惑した顔をした。 「そうか、じゃあせいぜい頑張れよ。俺は口説かれ慣れてるからな。明日から仕事だから、今日はもう寝る」 「おやすみ」 「おやすみ」  少しして、電気が消えた。 
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!