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三時を過ぎると峯田はエプロンを置いてどこかに行ってしまった。
蚊鳴屋が隣でノートパソコンをカタカタと操作している間(ホームページの更新をしているらしい)、サンタは教えてもらった通りに本の補修をする。
日が傾いてきたところで、今日の仕事は終わりと告げられた。今日は体験入店ということにして、ここで仕事を続けるかどうかは浮葉とも相談することにした。
ぺこり、と頭を下げて、帰宅しようと店を出ると、電柱の影に何かがぴゅっと隠れた。
隠れた、といってもそれが大人のおとこだということは隠し切れない体格から見て取れる。
不審者。まさか浮葉が警戒している人物の関係者だとは思わないが。
思わず立ち止まってしまったので、気づかなかったふりをして通り過ぎて様子を見ることもできなくなった。タバコでもあれば立ち止まっても不自然ではないのだがあいにくと持っていない。
困っていたら、店から蚊鳴屋が出てきた。
「あ、サンタさん、よかった、まだ近くにいて。……ん?」
自分に用事があったらしい。
蚊鳴屋は電柱に隠れているおとこを見ると、気安い笑顔で近づいていった。
「麦くん、おかえり」
声をかけられると、そのおとこはぴょんこ、と電柱から飛び出て頭を下げた。
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