14人が本棚に入れています
本棚に追加
確か鞆音家は浮葉が高校生のころ、兄が独り立ちした年に、子どもたちのプレゼントはいっせいに廃止されたのだった。しかしそれだと、末っ子の浮葉は兄と姉よりプレゼントをもらった回数が少ないことになる。お年玉も、いつまで経っても兄と姉よりも金額が少なかった。
兄と姉は結婚して、それぞれ幼いこどもがいる。大人たちにとって、サンタクロースの不祥事はほとんどが笑い事であったが、こどもたちにとっては深刻な問題だった。サンタクロースが悪いことをしていた、自分たちは悪い人からプレゼントをもらっていた、もうプレゼントがもらえないかもしれない? 感じ方はそれぞれだったが、去年のクリスマスにプレゼントをもらったこどもはそれを抱えて途方にくれている。
独身の浮葉には関係のない話ではあったが、サンタクロースには少しだけゆかりがないこともなく、その動向をなんとはなしに気にしている。
*
親戚への挨拶も一通り終わり、正月休みの最終日、浮葉は初詣に向かった。
浮葉が信仰している神様は京都の外に住んでいて、神様にちかいものや妖怪なんかが「視える」浮葉もまだその姿を見たことがない水の神様だった。
その神は、浮葉の体内に生まれた時から宿っていて、ときどきは心の中にある泉のようなものを揺らして何か訴えかけてはくるものの、いまいちそのはっきりとした意図は感じ取れず、そしてその揺らぎがあったときに浮葉自身に大きな変化があったかというとそういうわけでもない。
最初のコメントを投稿しよう!