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堂々巡りであることはわかっているのに、考えることを止めることはできない。
*
「浮葉さんとの暮らしはどうですか?」
次の日、蚊鳴屋に聞かれた。サンタがここで働き始めたころは、期末テストの資料を探す大学生がよく来ていたが、試験が終わった最近は客は落ち着いている。その代わり、卒業する大学生が持ち込む本の仕分けが最近の主な仕事だ。
「どう、とは?」
サンタは少し焦った。
「いや、浮葉さん、あんまり他人と暮らせ無さそうっていうか、自分のペースを崩されるのを嫌がる人だから。サンタさんも浮葉さんも、お互い気を使いすぎてないといいな、と思って」
「浮葉がどう思ってるかはわかりませんが……なんていうか、逆に全然意識されてないっていうか……空気みたいに扱われてる気がして、いいことなんだろうけど、ちょっと寂しい気もします」
そう言って、蚊鳴屋を見たら彼はきょとんとしてサンタを見た。
しまった。
へんな言い方をしてしまった。眠くて口が滑った。
「浮葉さんのことが好きですか?」
蚊鳴屋は小首をかしげて訊ねた。
「それは、どういう」
「どういう意味でもいいんですが」
「そりゃ、好きから嫌いの二択なら、好きです」
止めようと思ったが赤面するのを止められなかった。癖で、顔を手で覆ってしまう。
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