1 サンタクロースが降ってくる町

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 しかしそういう浮葉の手にも、缶ビール。蚊鳴屋に運転を任せ、気分よく酔っている。 「酔って暑くなってきたから窓開けるね」 「こら。俺は寒いぞ」  峯田は聞かず、しばらくすよすよと風を感じ、室内のエアコンのあたたかい風をすべて逃がしたころに、寒くなって来たと言って窓を閉めている。 「帯刀は、子どものころサンタさんから何もらったの?」  峯田が唐突に言った。 「サンタ? なんでだ?」 「今サンタさんの話題が嫌でも耳に入ってくるからさ。みんながどんなものもらったのかな、と思って」 「俺は、ふつうにゲームとかだったと思うけど……」  事前に兄貴と欲しいゲームを考えておいて、二人ともが欲しいと思うゲームをお願いすれば、貸し借りしあって二人とも、両方のゲームが出来るから。と何気なく言うのが、峯田にも浮葉にもうらやましい。峯田は兄弟がいなかったし、浮葉はゲームが欲しいと言える家庭ではなかった。 「浮葉は? お坊ちゃんだからいいものもらってたんじゃない?」 「どうだったかな」     
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