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「ぼくは、プレゼントはもらったことないけど、母親がいつもごちそうを作ってくれたからクリスマスって好きだったなあ。クリスマスからお正月って、大人はお金が出て行くばっかりで苦しいけど、こういう子どものころの楽しい思い出があるから、やっぱり自分の子どもにもクリスマスとお正月はちゃんとやってあげたいって思うんだろうね」
「プレゼントもらったことないのか? おまえんち、西洋かぶれだっただろ」
「うん、でもママンが幻想生物嫌いだったからね」
峯田の母は純粋な日本人だが、妖怪が視えるという体質に悩まされて日本を出て行った。日本にいるころも、妖怪を近づけないために家を洋風に飾ったり外国人と付き合ったりした。その結果、峯田が生まれた。というように伝え聞いたらしい峯田から浮葉も聞いた。
「俺もサンタは嫌いだ」
浮葉が峯田を振り返りながら言った。
「そうなの? 意外だな。浮葉なら、なんでも好きなものもらえたんじゃないの」
「小学生のころ、朝起きたら、枕もとに図書カードが置いてあったことがあった」
「ふうん? いいじゃない。図書カードもらえたら嬉しいなあ」
「……」
浮葉はつまらなさそうにまつげを伏せた。それ以上言う気はないらしい。図書カード、もらえたら嬉しいし、浮葉も喜びそうだけれど、と隣で運転をしながら蚊鳴屋も思った。浮葉は小説や漫画はもちろん、図鑑や大判の美術書などをたくさん持っている。だいたいは親から一方的に与えられたものではなく、彼が望んで買ってもらったものだったと思う。
「そろそろ着くぞ」
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