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蚊鳴屋が声をかけたので、外を見るといつの間にか駐車場、という名の空き地についていた。
小さな山に見えるが、これはどうも古墳らしい。どこかに王様の眠る部屋があるのかもしれないが、浮葉によるととうの昔(千五百年ほど)に盗掘されて何も残っていないだろう、と言う。そういうわけで、ここはずっと、小さな山だった。その中を進んでいくと、浮葉の腰ほどの高さしかない、小さな社がある。これがいつからあるのかは、浮葉も知らない。地元の人間も知らない小さな社だ。とはいえ、浮葉が昔、初任給を使って改装したため社の周りだけは新しい。
浮葉はその本宮に進むと、しばらく目を閉じた。後ろで蚊鳴屋と峯田も黙っている。ここに、浮葉の中にいる水の神様が眠っている。その運命がどういうことなのか、浮葉にはまだわからないが、ここにいると自分の魂と、自分の中に宿る神様が共鳴するのがわかる。願うのは、いつも同じだ。一年間、心穏やかに過ごせますように。去年は、後ろにいる峯田のおかげで慌ただしい一年だった。
そしてふと、峯田が何かが落ちてくる音に気が付き
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