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2 サンタのするサンタクロース以外の仕事
次の日、サンタが朝目が覚めると、浮葉はもういなかった。
リビングのテーブルに、一万円札と、メモが置いてあった。
『仕事に行きます。十九時には帰ります。このお金で昼食、必要なものがあったら買ってください。困った時は電話をしてください。もしくは蚊鳴屋を頼ってください』
そうして浮葉と蚊鳴屋の携帯電話の番号が書いてあった。
浮葉が仕事に行く準備をしている間、まったく気づかず寝ていたというのがはずかしかった。浮葉が置いていったお金を見る。近くにスーパーやコンビニがあったから、自分で食料などを調達することは難しくはないだろう。しかし、浮葉が自分のサイフからお金を出して置くところを想像し……なんだかとてつもなく、自分が情けなくなった。
*
教えてもらった最寄り駅で、峯田とばったり会った。
「あれっ、サンタさん。奇遇だね。どこ行くの?」
「蚊鳴屋さんちに行こうと思って……」
「ちょうどぼくも帰るところだから一緒に行こう。昨日はあれから大丈夫だった? 浮葉に貸したものが何だったか思い出せた?」
「いいえ」
サンタが力なく首を振った。
「まあ、焦ったってしょうがないよ、気楽にいこう」
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