3 罪と罰と

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3 罪と罰と

 おやすみ、と言って電気を消して、しばらく経った。  もういいだろうと思ってサンタは体を起こした。静かな室内でまだしばらくはエアコンが動いている音だけが聞こえる。  先週降った雪は、その後降った雨がほとんど溶かしてしまい、今は道の端に少しずつ残っているだけになった。  いつの間にか、ここで暮らすことが当たり前になりかけていた。  当たり前になればよかったな、と思う。  しかし、先日雪の中で、サンタは自分がサンタであることを思い出してしまった。  それ以来、夜すぐに眠れなくなってしまった。日本に来てから、浮葉に合わせて夜だらだらと夜更かしをしがちだったのでただでさえ睡眠時間は短くなっていた。それでこの寝不足がたたって、ここ数日昼間の仕事がきつい。  サンタクロースは、なにも一年のうち一日だけ、クリスマスイブの日にだけ働くわけではない。もちろんその間、サンタ村に観光に訪れる客たちの対応、子どもたちがよいこでいるかの監視など一年中忙しい。それが、今年はこんなにものんびりすごしている。  いや、自分は、すべてのこどもたちを裏切った側の人間なのだ。     
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