奏音

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 とりあえず、すっとぼけてみると三好さんは口を尖らせた。  私の記憶が正しければ、この方はそろそろ40歳を超えるはずだ。 「忘れたんですかー?」 「だから何が……」 「だから奥さんに……」  と、ここで三好さんは他の社員に呼ばれた。 「あっ、この件は後でメールしますね」 「……はあ」  一体なんなんだ。  モヤモヤとしたままお昼を迎えると、私は部署のディスクでお弁当を広げた。 「あれ? 今日はここで食べるの?」  部署に顔を出してきたのは、嘉人の同僚の鈴木くんだった。  結婚式にも来てくれていたし、私も何度か一緒に話したことがある。 「ええと。仕事終わらせて早く帰りたくて」 「なんだよー、先に言えよな。じゃあ俺もここで食べるわ」  そうか、いつも鈴木くんと一緒に食べているのか。 「わ、奏音ちゃんどうしたの?」  お弁当を覗き込んだ鈴木くんが驚いた声を出した。 「何が?」  嘉人の作ってくれたお弁当は見事に冷凍食品ばかりだったので見栄えは悪くない。 「いや、いつもおかずあんまり変わんないけど冷食はほとんどないのに。具合でも悪いのか?」 「寝坊したんじゃないかな。てか、冷食じゃないとか見た目でわかるのか?」     
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