奏音

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「何言ってんだよ。いつもお前が言うじゃん。奏音ちゃんは料理上手くはないけど、頑張って作ってくれてるって。だから残さないってさ」  なんだか胸が熱くなった。  確かに今まで嘉人はお弁当を残したことがない。  でも、美味しかったとも、ありがとうとも言われたことがないから、仕方なく食べてくれているのだと思っていた。 「俺いつも愚痴とか言ってない?」 「愚痴? 奏音ちゃんの?」 「うん」 「口うるさいとかは良く言ってんな」  あの野郎。  折角少しは見直したと思ったのに。 「でも愚痴ってる時のお前も幸せそうで妬けるよ」 「え?」 「わかってる? お前、奏音ちゃんの話してる時すごい幸せそうなんだよ」  何それ。  愚痴ってるのに幸せそうって意味がわからないんですけど。  それから、午後の業務を何とか終えそうな頃、社内メールがパソコンに届いた。  それは、三好さんからだった。  メールの内容に私は目を疑った。  私はスマホをスーツのポケットから取り出すと、嘉人にメッセージを打った。
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