鳥籠

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鳥籠

 俺の隣には彼女がいた。  そして彼女の隣には俺がいる。  このことはもう自明の理のようにふたりの中で共通項となっていた。この部屋でどちらかが欠けている時間があれば違和感を感じるほどになっていた。  俺が急用で家を出払っていたとき、ひとりで時間を過ごしていた彼女は「アルデンテのパスタを目前にして、家にソースがないことに気づいたときみたい」と例えたことがあった。  彼女の好きなものはどうやらラーメンのたぐいではなかったらしい。休み中に三食とも食べ歩きに付き合わせたのは失敗だったと見られる。  そうやって先週末の出来事について悔やむ俺を、彼女はやんわりと弁護した。そういうことじゃないんだけどな、と一言添えながら。 「それはそれでいいの。わたしはどんな食べ物よりいっしょにいる時間が一番おいしいんだから」 「じゃあ今晩はお前が作るか? 夕飯」 「それは許可できませんー」  枕のような大きさを誇る、犬のぬいぐるみを胸に抱えてごろごろと転がりながらそう答えた。抱きかかえられたぬいぐるみの首は締まっており、こちらに哀願するような視線が向けられる。     
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