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ボロボロ
◇
壁の時計を見ると、すでに夜の9時をまわっていた。
また残業。
といっても熱中してるあまり、時間に気がついていないだけなんだけど。
集中が途切れるとどっと疲れがでる。
「山崎、まだいたのか」
課長の井出さんがフロアに入ってきた。
「あ、はいすみません。」
「いや、いいけどほどほどにしとけ」
「はい。丁度きりついたんで帰ります」
「気をつけてな」
「はい。お疲れ様です。課長も早く帰ってあげてくださいね」
「はいはい」
課長は…
奥さんも子どもも居て
それを知らずに好きになりそうになって
優しくて、頼れて、あの柔らかい笑顔。。。
家族水入らずのところを偶然見たときは、複雑な気分だったなぁ。
エレベーターに乗りながらそんなことを考えていると、あっという間に1階へと降りていく。
この時間じゃもう誰も居ない受付の横には、駅の改札のようなゲートがあって、社員証をタッチしてでることでタイムカードのかわりになっているそれにピッとして外へ出た。
雨…
地下鉄へと降りる階段は、15秒も走ればたどりつく。
行くか。
覚悟を決めて飛び出した。
思ったよりも強い雨でうつむき加減に下を向きながら走る。
『うわぁ』
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