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いつの間にか降ってきた雨にも気づかないくらいぶっ倒れたように寝ていたんだ。
遠くて声が聞こえて、暖かいものに包まれたような感覚になった。
神のすけのやつが、休んでる俺を外から見えないようにでもしてくれたのか。
そう思っていた。
目を開けた俺は、体の上にいつもと違う重みを感じた。
なんだこれ?
口で引っ張ってみると、どうやらジャケットのようだった。
女物だろこれ。
匂いがそう言っている。
犬に上着かけて帰るって変なやつ。
でもこれ……その辺に捨てていく訳にもいかねぇ。
どうすっか。
まだ夜は明けていない。
とりあえず、帰るか。
『おぉワンコなに持ってんだおい』
酔っぱらいが声をかけてきた。
めんどくせぇな。
「うーぅ」
「ゴールデンってそんな声だすのかよ」
うるせーな。
好きでゴルやってんじゃねーし。
酔っぱらいの相手なんかしてらんねぇ。
俺は犬のまま、ダッシュでそこを離れた。
しっかし腹減ったな。
犬のままじゃまともな飯も食えないし、上着落とさないようにするのも面倒だ。
誰も通らないような路地裏めがけて走って男になった。
バッと髪をかき上げて、とりあえずの身なりを整えた。
あぁ腹減った。
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