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「今はこういうちょっと女の子みたいな気配りが出来る男っていうのがモテるのねえ。私の時代なんかは新井くんみたいな、男臭いのがモテたけど」
新井くん、というのは取締役総務部長のことである。部下たちからの人望が厚く、本社内でも強い発言力を持つ人物だ。年が近く、なにかと部どうしの関わりもある分、二人はちょっと仲がいい。新井を「くん」付けで呼ぶのも宇美くらいのものである。
「若い頃は硬派で本当に格好良かったんだよ。想像付かないかもしれないけど」
「新井さん、なんだかちょっと怖いです。優しい人だなとは思うんですけれど」
「ああ、なんかもうエネルギーが満ち溢れて、目がギラギラしてるもんな。最近は太っちゃって顔までギラギラしてるときあるけど。綿貫は人の上に立つようなオーラ有る人苦手だよね」
宇美が軽く笑った。
「笑顔で話しかけられていても、なんか、自分の駄目さ加減まで全部見透かされちゃってるような気がして、顔見るとどきどきしちゃうんです」
「なるほどねえ。なかなかいいセンサー持ってるよ。人事部向きだねえ、綿貫は」
宇美はぽんぽん、と有紗の肉付きのいい肩を叩いた。
人事部向き。ときどき宇美はそうやって励ましてくれるが、有紗自身、とてもそうは思えなかった。
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