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そもそもこんな大企業に就職が決まってしまったのも、人事部に配属になったのも、偶然に過ぎなかったのだ。自分の実力ではない。
何社受けても面接で落とされ、就職浪人を覚悟した春。急遽辞退者が出たために、一名のみ新卒を追加採用するという情報をたまたま掴み、なんの下準備もないままに慌てて面接を受けた会社がここだった。その時、面接官だった宇美とした話は、今でも忘れられない。
他社の集団面接では、他の学生たちのように熱意のある発言ができなかったこと。最終面接までどうにか辿り着けても、似たようなスペックの人材と比べられたとき、かならず自分の方が落とされてしまうこと。
「君はうちの業種には向いていないんじゃない?」と人事担当者に言われてしまい、面接時に泣き出してしまったこと。……宇美から採用の連絡をもらったとき「あなたがこの会社を受けてくれてよかった」と言われたこと。
宇美との面接は、ほとんど就活苦労話しかしていない。一社も内定をもらえなかった話をしたから同情されたのだろう。この会社に就職が決まったのは、本当にただのラッキーだったのだ。
だからその分、入社してからがきつかった。宇美は変わらず気にかけてくれるが、今年の新卒にも仕事ですでに追い越され、契約社員にも頭が上がらない。志を持って働いている人たちは眩しいが、近寄ることもできないまま差は開いていく。
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