Adagio

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「いいですね。そういえば、新レシピ出る頃ですよ」メニューは金曜切り替えが多いから、週末ならちょうどいい。 「じゃあ、今待ち合わせ場所とかぜんぶ決めちゃおう」華美が鞄から手帳を取り出した。  週末、それからいつになるのかはまだ分からないが、未来に訪れる四人での食事会を想像すると、有紗の気分は高揚した。 (帰ったらRenに報告しなきゃ)  そう思うとき、有紗は心に自然と神長の姿を描いていた。 ・-・・・ -・・- -・-- 「よく出来てるね。起動までのアクションで、その人の心理状況や性格を把握するっていうのがまたすごい」  坂巻は、神長が大学時代に開発したというウェブアプリケーション『Innocence』に触れながら感嘆の声を漏らした。 「プレイヤーは数回の反応で良し悪しを判断しますからね。挨拶の次には、相手の心理を察した問いがかかるように仕掛けてあります」  横からPCのモニターを覗き込みながら、神長が言う。  定時を過ぎ、すでに総務部の半数以上が帰宅している。急ぎのドキュメント作成が一区切りし、二人はようやく一息ついたところだった。
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