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「成長したイノセンスを解析すると、ユーザーのかなり細かい嗜好が分かります。今はそれをゲームデータとして反映させているだけですが、ある意味これは巨大なデータバンクのようなものです。
応用すればコンサル業などで成果を出せますし、人の興味を探れるので新規ビジネスの手助けにもなります。このゲームが世界中で利用されれば、世界中に使い道が生まれる仕組みです」
途方もない話に聞こえるが、神長にとっては当たり前に手の届く現実である。坂巻は感心したように頷いた。
「大学の頃からもうそんなに先のこと考えてたんだ」
「はい。AIが人間の模倣をすることを喜ぶ時代ではありませんから。そこからどう応用していくかが重要かと。もちろん多くのデータを引き出すためにも、人間と同じように会話が出来る、という要素は必須ですが」
「神長くんは、世間の認識の何歩も先を行ってる」
「おかげで学生時代の論文では、なかなか苦労しました」
冗談めかした返事だが、これはおそらく事実だろう。近い将来の話をする間もないほど『今』に手一杯だが、そのうちゆっくりと大学時代の話も聞いてみたいものだと坂巻は思った。
「まきさん」
神長がふいに書類の山の上に乗っているスマートフォンを指した。メッセージの着信らしい。
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