傘のない夜に

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傘のない夜に

 終電近くまで仕事をして、やっと最寄り駅に着いたと思ったら雨が降ってきた。  ついてない。  今日は本当についてない。  朝、ハイヒールをマンホールの溝に突き刺して一本電車に乗り遅れるし、乗った電車で腐ったヨーグルトみたいなげっぷを嗅ぐ羽目にもなった。  会社で唯一の憩い「イケメン上司」は出張中。かわりにアヒルみたいな上司にコキ使われた。  文字打ち得意なんて誰も言っていないのに、アヒル隊長の書類まで作らせるなんて時代錯誤もいいところだ。  アヒル文字は私にはわかりませんから! と断ってやりたかったけれど我慢した。  仕事とはそういうもの。合理的ではないけれど。  だから雨が降っていたって、大したことではない。
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