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――‥ ルイ・アクラス。
それが今の私の名前で、忌み嫌われるアクラス家の姓。……私も何度も繰り返し続けるあの悪夢を見る中、少し思い出したことがあります。それは前世での記憶で… 自分が愛用しているBLゲームの設定や世界観、登場人物などを姉が興奮しながら私に教えてくれたことを。
全て、とは言えませんが、それでも断片的な記憶が頭痛と共にちらつく。
確か、『アクラス家』というのは貴族は貴族でもあまり善い貴族とは言えない。寧ろ、領民から巻き上げた税金などで私腹を肥やし、贅沢三昧の暮らし…
毎日が屋敷でパーティーを開いては、父は気に入った女を見つければ手篭めに。母も同じく。二人には大勢の… 見目麗しい愛人がいた。
もちろん、合意じゃない。
王都フィルから少し離れた辺境ダザールの領地、アクラス家はその領主だ。
だから、重く乗しかかる税金で領主が自分の私腹を肥やしていても… 気に入られ、愛人になれと言われ拒絶しても、アクラス家が雇う私兵に強引に連行され、そして二度と戻らない…
そんな好き勝手し過ぎるアクラス家の悪事は今までも何度か王宮から調査の指示があり、騎士団が調査に入ったようですが、なかなか物的証拠が見つからないとか。
――‥ しかし、
人の口には蓋ができないもの。あっという間にアクラス家の噂は領地の外にまで広まった。
そして、
もう一つ。
『ルイ・アクラス』
敵意だけでなく、なぜ、侮蔑の目を向けられるのか――‥
それは、
ルイ・アクラスが『毒にも薬にもならない』と思われているから。
即ち、
魔法が使えない‥
『落ちこぼれ』
───だということ。
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