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「クロエさん、お客様ですよ」
燕尾服の男が、何処かの部屋のドアをノックしてからそれを引いて開いた。
部屋の中から、クラクラするような、恐らくは何か香を焚いているのだろう。
部屋の中心には丸いテーブルと椅子があって、そこには、
「ようこそ、風のやむ館へ。ここの主のクロエでしてよ」
くるみはぽかんとした。
大きな丸いテーブルの後ろ、猫足のゴブラン織りの椅子に座っていたのは、女の子だった。
14~5歳の、フリルやレースのついた真っ黒なワンピースをきて、同じ真っ黒なヘッドドレスをした少女。
髪の毛までも漆黒で妖しく煌めいている。
六畳程の室内に沢山あるロウソクの灯りに光る瞳は、片方だけが宝石の色をしていた。もう片目は、これもまた黒のハート型の眼帯で見ることは出来ない。
ただ、酷く愛らしい顔の造形をしている。
とにかく、くるみがイメージしていた占い師とは全く異なっていた。
「あの、あなたが魔女の占い師さん?」
「そうに決まっていますわ。私言いましたでしょう?ここの主(あるじ)、と」
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